Vtuberのライブ配信といえば、「ゲーム実況」は定番のひとつ。
大勢のVtuberが思い思いに好きなゲームをプレイしている一方、時には流行の作品が生まれたり、YouTuberやクリエイターともコラボレーションしたりと、日頃から活発なジャンルのひとつです。
ただし、ゲームの実況配信をする際には注意も必要です。メーカーによっては配信や動画投稿を許可していないことがあるほか、プラットフォームによっては収益化が許可されていない場合もあります。ですので、ゲーム実況をする際には意図せず権利を侵害してしまわないよう、気をつけなければなりません。
そこで本記事では、ネット上での「ゲーム実況」について、主要なメーカーの規約をピックアップ。「配信や動画投稿を許可しているか」「制限やルールはあるのか」といったポイントについてまとめてみました。ゲーム実況を検討しているVtuberさんの参考になりましたら幸いです。
(※規約は2021年3月時点のものであり、改定される場合があります。実際にゲーム実況を行う際には、各メーカーの最新の情報をご確認ください)
目次
そもそも「ゲーム実況」はしていいの?
著作権法において、ゲームの映像や音声は「映画の著作物」として保護されています(*1)。つまり映画と同様に、複製してアップロードすれば「著作権侵害」として訴えられてもおかしくはありません。
個人的に楽しむ「私的複製」の範囲であれば問題ありませんが、YouTubeなどへのアップロードはその範疇にないと言えます。たとえ視聴者数が少ないとしても、「不特定多数が見られる場所で動画を投稿・配信した」時点で、それは公衆送信権の侵害に当たるからです。
ですが一方で、近年のゲーム機には動画共有機能が搭載されているものも少なくありません。そういった機能を使えば、スクリーンショットをSNSに投稿する以外にも、YouTubeなどと連携してライブ配信をすることも認められています。
現状としては、ゲーム実況は「メーカーが認めている範囲であれば配信や投稿が許可されている」と言えそうです。最近はゲームの実況配信の収益化を認めている企業も珍しくなく、業界的にも自由度が高まりつつあると言えるでしょう。
ゲーム実況の「許可」の範囲もさまざま!
では、実際にはどのようなメーカーがゲーム実況を許可しているのでしょうか。具体的なメーカー名や作品名を挙げる前に、注意しておきたいポイントがあります。
それは、「ゲーム実況の『許可』の範囲もさまざまである」ということ。たとえば、以下のようなケースが考えられます。
- 自社のタイトルはすべて実況も収益化もOK
- 一部のタイトルのみゲーム実況を許可
- 特定のプレイモードのみ実況を許可
- 序盤は実況してもいいが、途中からは禁止
- ゲーム機本体の機能を使わないゲーム実況は禁止
- 実況は許可するが、法人の収益化は禁止
- 実況は許可するが、特定の配信プラットフォームに限る
- ゲーム実況をする際には、付加価値をつけなければならない
また、企業の中には、販売しているゲームすべてに適用される規約がなく、作品ごとにガイドラインを設けている場合もあります。その内容もさまざまですので、あらかじめ「許可」されている範囲をしっかりと確認したうえで実況するようにしましょう。
それでは、ここからは実際に掲載されているガイドラインを参照しつつ、主要なメーカーではどのような形でゲーム実況が許可されているのかを見ていきましょう。
主なゲーム会社
任天堂
個人であるお客様は、任天堂のゲーム著作物を利用した動画や静止画等を、営利を目的としない場合に限り、投稿することができます。ただし、別途指定するシステムによるときは、投稿を収益化することができます。
任天堂は、Nintendo Switchのキャプチャーボタン等の機能を利用する場合を除いて、お客様ご自身の創作性やコメントが含まれた動画や静止画が投稿されることを期待しております。お客様の創作性やコメントが含まれない投稿や任天堂のゲーム著作物のコピーに過ぎない投稿はご遠慮ください。
(https://www.nintendo.co.jp/networkservice_guideline/ja/index.htmlより)
2018年11月。任天堂が「ネットワークサービスにおける任天堂の著作物の利用に関するガイドライン」を発表し、配信者のあいだで大きな話題になりました。
このガイドラインでは、上記の「別途指定するシステム」として、Facebook、ニコニコ動画・生放送、OPENREC.tv、Twitch、Twitter、YouTube、TwitCasting、Mirrativの名前が挙げられており、これらのサービスを利用しての収益化はOKとなっています。
Cygames
お客様は当社コンテンツから取り込んだゲームプレイの動画や静止画を、共有サイトに投稿することができます。
2分30秒以下の短い動画を除き、投稿される動画や静止画には、実況音声やコメントを追加するなど、お客様の創作性を求めます。取り込んだ動画をそのまま投稿したものや、他者が投稿した動画の転載、イラストやムービー、音楽などの鑑賞を主目的としたものなどは対象外といたします。
(https://www.cygames.co.jp/streaming_guidelines/より)
Cygamesの配信ガイドラインでは、以下の作品を対象としています。
- 『グランブルーファンタジー』
- 『グランブルーファンタジー ヴァーサス』
- 『神撃のバハムート』
- 『プリンセスコネクト!Re:Dive』
- 『Shadowverse』
- 『シャドウバース チャンピオンズバトル』
- 『ワールドフリッパー』
収益化も認められており、YouTube、Facebook、ニコニコ動画・ニコニコ生放送
、TwitCasting、Mirrativ、OPENREC.tv、SHOWROOMなどのプラットフォームが利用可能。ただしMildomは本ガイドラインの対象外となっています。
また、最近話題の『ウマ娘 プリティーダービー』についても配信と収益化が認められていますが、本作に関しては個別にガイドラインが掲載されています。配信をする際には、あわせてご確認ください。
(参考リンク:https://umamusume.jp/news/detail.php?id=107)
カプコン
投稿可能な動画:YouTube、Twitch、Twitter、Facebook、お客様ご自身のウェブサイト、またはその他の動画共有サイトで、ゲームの攻略・紹介・実況・解説動画を投稿していただくことが可能です。
ゲーム機本体やゲームソフトの機能(Steam版ソフトの場合はSteamクライアントの機能)でゲーム映像の共有が許可されている場合は、当該機能を利用して動画の投稿が可能です。
これに該当しない方法で動画を作成・編集・投稿する場合は、ゲーム映像に、ご自身のコメント等その他の価値や利点を付加して提供する必要があります。
カプコンのガイドラインでも、個人の配信者はゲーム実況と収益化が認められています。ちなみにこちらのページでは、「ネタバレ」についての考え方なども掲載。参考になる部分も多いと思いますので、興味のある方はぜひご一読ください。
スパイク・チュンソフト
下記に記載する公開許諾タイトルに記載のあるゲームソフトに限り、当社はプレイ動画の利用を許諾致します。
プレイ動画は以下の場所にてご利用いただけます。
(1). お客様の個人的、かつ非営利目的のブログ・ホームページ、及びSNS・Twitter
(https://www.spike-chunsoft.co.jp/playlicense/より)
(2). 動画投稿サイト(但し、下記禁止事項に該当する場合にはご利用いただけません。)
スパイク・チュンソフトの作品もゲーム実況が認められていますが、「公開できる範囲」が明確に定められているため、プレイする際には注意が必要です。
まず、(1)にもあるとおり「個人的、かつ非営利目的」であること。収益化は認められていません。
また、作品によっては「利用可能範囲」があり、ゲームの途中までしか配信できない場合があります。『ダンガンロンパ』シリーズをはじめとする複数のタイトルが当てはまりますので、上記ページにアクセスして確認するようにしましょう。
他方で、『不思議のダンジョン 風来のシレン5plus フォーチュンタワーと運命のダイス』については個別にガイドラインが制定されており、個人配信については収益化も認めています。ただし個人事業主を含む法人利用は別途許可が必要となりますので、ご注意ください。
(参考リンク:https://www.spike-chunsoft.co.jp/news/company/9645/)
フロム・ソフトウェア
個人で楽しむ以外の目的で、ゲーム中に使用されている画像・動画を収録して公開することは、著作権等の関係上お断りさせていただいておりますが、本体のシェア機能などがあるゲーム機においては、その機能の範囲内でご利用いただけます。しかしながら、営利目的での静止画・動画などの利用(レストランやお店での上映や、入場者から入場料を受け取るイベント、インターネットでの配信など)は、固くお断りいたしております。
(https://www.fromsoftware.jp/jp/faq-other.html#sec_002より)
フロム・ソフトウェアでは、ゲーム画面を収録して公開することを禁止しています。ただしPlayStation4のブロードキャスト機能などを使った配信と投稿については、非営利の範囲で認められているようです。
コナミ
著作物の利用について、原則として個人のお客様へは許諾をさせていただいておりません。
同様のご相談をいただくケースが多く、個別に対応させていただくことが困難な状況であるとの理由からです。
上記の通り、コナミは原則として個人のゲーム実況を認めていません。
ですが一方で、『桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も定番!~』と『ソロモンプログラム』についてはガイドラインが設けられており、動画投稿・配信・収益化が認められています。ガイドラインには禁止事項も記載されておりますので、詳細は下記リンクからご確認ください。
(参考リンク:https://www.konami.com/games/momotetsu/teiban/cp-movie.html / https://www.konami.com/games/solomonprogram/mv_guideline)
Epic Games
本方針において、「ファンコンテンツ 」とは、(i) Epic IPに基づいたファンアート(アートワーク、写真、映像など)、および(ii)一 般の利用者が自由にアクセスできる、Epic IPに関連した個人の、かつ非営利目的のウェブサイトおよびアプリをいいます。
ファンコンテンツには、商業上(金銭等)の目的が含まれていてはなりません。お客様は、例外的に、広告によりウェブビデオ(YouTubeなど)から収益を得ることができます(ただし、これらのビデオがその他の点において本方針の要件を満たしている場合に限ります )。
『フォートナイト』などでおなじみのEpic Gamesは、ファンコンテンツ(ゲーム実況含む)の制作を容認しています。基本的には非営利に限りますが、広告を用いた収益化は制限していないようです。
ユービーアイソフト
ゲーム内で使用されている楽曲のいくつかはUbisoftオリジナル楽曲ですが、一部のタイトルはアーティストがライセンスと権利を所有しています。外部にライセンスがある楽曲が含まれる動画を掲載した場合、そのWEBサイトにて著作権侵害が発生する可能性があります。こういったことを避けるため、プレイ動画を投稿する場合は、あらかじめゲーム内の音楽をオフにしておくことをお勧めします。
(https://support.ubisoft.com/ja-JP/Article/000062649より)
『レインボーシックスシージ』などを販売するユービーアイソフトは、FAQページでプレイ動画の投稿と配信について以上のように記載しています。収益化も可能ですが、いくつかの禁止事項も併記されています。
スクウェア・エニックス
スクウェア・エニックスは、販売しているタイトルすべてに共通するゲーム実況のガイドラインがありません。作品ごとに配信ガイドラインを設けているので、それぞれの公式サイトで確認するようにしましょう。
以下、ガイドラインを掲載している作品のリンクを例として掲載します。
バンダイナムコエンターテインメント
バンダイナムコエンターテインメントも、メーカー全体に共通するゲーム実況のガイドラインはありません。一部のタイトルについては規約が定められていますので、個別に確認するようにしましょう。
セガ
セガも同じく、共通するゲーム実況のガイドラインはありません。Q&Aサイトでゲーム実況についてふれられているタイトルもありますが、その多くは「シェア機能を使った投稿」に限定しているようです(参考リンク:検索結果 – セガ Q&Aサイト)。
他方でオンラインゲームについては、非営利目的に限りプレイ動画の投稿と配信を許可しているタイトルもあります。権利表記などの守るべき注意事項もありますので、まずは規約をご一読ください。
コーエーテクモゲームス
コーエーテクモゲームスにも共通するゲーム実況のガイドラインはありませんが、一部タイトルについてはシェア機能を使った投稿が認められています。たとえば『信長の野望 Online』のサイトでは著作物の利用規約が掲載されていますが、シェア機能以外の配信は難しそうです。
(参考リンク:https://www.gamecity.ne.jp/nol/rules/rule.htm)
Mojang Studios
お客様は、当社のゲームの映像を YouTube またはその他の Web サイトに投稿することができます。実のところ、当社はお客様がそうすることを希望しています。
お客様が必須要件を遵守する場合に限り、以下のとおりとします。 お客様は、お客様が当社のゲームをプレイまたは使用する動画を、当該動画から収益をあげないことを条件に、何らかの法的根拠に基づいて作成、使用、および頒布することができます。
ただし、当該動画に音声解説などのお客様独自のコンテンツを追加することを条件に、当社のゲームの動画を使用して広告収入などを通じて収益をあげることはできます。お客様が追加する量も、十分に公正なものであり、他者が対価を支払う価値があるか、お客様が収益をあげる価値があるものでなければなりません。
(https://account.mojang.com/documents/brand_guidelinesより)
必須要件 (ブランドおよびアセット利用ガイドラインに記載) および命名ガイドラインを遵守し、これに従う場合に、合法的な理由で Minecraft をプレイしたり使用したりしている動画やストリーミングを作成、使用、配布すること、および広告を追加したり許可したりすることでこうした動画やストリーミングからお金を稼いでも構いません。
(https://account.mojang.com/documents/commercial_guidelinesより)
Mojang Studiosには複数のガイドラインがあり、同社が開発した『Minecraft』について、以上のような形でゲーム実況を許可しています。
収益化も可能ですが、「無料で閲覧できること」「独自のコンテンツを付加していること」などの要件を満たしている必要があります。詳しくは商用利用ガイドラインをご確認ください。
まとめ
以上、「ゲーム実況」について、主なゲーム会社のガイドラインを紹介させていただきました。
繰り返しになりますが、もし視聴者数が少ないとしても、不特定多数が見られる場所で動画を投稿・配信すれば、公衆送信権の侵害に当たります。事実として、「(視聴者数は)多くても10人いかないだろう」と思って配信をしたところ、ゲーム会社の弁護士から連絡が来た、という話もありました(*2)。
近年は新作ゲームの発売に際して配信ガイドラインを掲載している企業も多く、本記事でご紹介した以外にも規約を設けている会社は少なくありません。「他の人が実況しているから大丈夫」と安心せず、自分でガイドラインを読んでから配信するようにしましょう。
(*1)https://www.bengo4.com/c_23/n_1115/
(*2)https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201204/k10012744221000.html
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