「Vtuberに中の人などいない」
……かどうかで議論が起こることはそれほど珍しくない一方で、「中の人」を公開するスタイルのVtuberも存在します。声優名を公開する企業Vなども存在し、一概に「いない」とも言えなくなりつつあります。
ポイントになるのがVtuberの概念が拡張され続けていること。営利目的の企業Vなのか、個人VなのかでもVの認識の仕方が異なってくるため「文化の違い」による衝突がある一方で、どちらもVとして認識されるケースが増えているからです。
企業と雇用される側のVの労働問題なども起きているため、ちょっと深掘りしてみようと思います。
中の人を公開するかどうかはブランディングに影響する
記事で使わせてもらいますね~
— しらたま。🐱フリーライター (@siratama_3gou) April 21, 2019
マーケティングのお話なども絡んできますので~#マシュマロを投げ合おうhttps://t.co/IDKkPtOQpT pic.twitter.com/JPPUQPZ4q7
さて、この記事を書くきっかけになったのがこのマシュマロです。
詳しい内容は実際の画像をクリックしてもらえばわかるのですが、「声優名を公開しない企業Vはその後の声優としてのキャリアに繋げられないためCVを公開すべきではないか?」という内容で、私個人への質問になっています。
私個人としては「ブランディングに影響するのでわけて考えるべき」という意見です。
なぜなら、「CVを公開することでアクセスできなくなる市場が存在し、キャリア以前に売れずに終わる可能性がある」と思っているからです。
察しの良い方はすぐに理解していただけると思いますが、声優を公開することにはデメリットもあります。
特に個人勢を主体とした「Vと魂は不可分」と考える層には「声を変えられるキャラクター」と認識される恐れがあるためです。企業側の都合でいくらでも声が変わる可能性があるVを愛せるか……という客層の心が試される部分でもあるため、広く認知されたい場合はマイナスになる恐れがあるのですよね。
また、「ブランドネームがあるほどの声優は雇うのにお金がかかる」のがポイントです。無名の新人声優を雇っても声優名を公開するメリットが薄いのです。
マーケティング、ブランディングの面から考えて、声優を公開するメリットってそれほどないのですよ。もしやるのであればオーディションで選ぶなど大掛かりなイベントをするなど、デビューまでの道のりに大金をつぎ込む意識でやらないとブランディングができません。
そんなわけで、「そもそもやりたがる企業がいない」という結論に至ります。
それを成立させたいならまず「無名でも声優を公開するメリット」から考え、それを受け入れる土壌(文化)を作る必要があるというのが個人の見解です。
公開しなくてもキャリアには使える
こういう話をすると「声優軽視だ!」と思われるかもしれませんが、別に非公開でもキャリアとして使うことはできるんですよね。本人が「○○の中の人でした」って言えばいいだけなので。
なんなら、営業用に企業名&Vtuber名が記載された名刺を作って「守秘義務守れる人にだけ配る」とかもできますし。重要な取引相手の場合はどんな人が声優を努めているか「顔や本名が見えるかどうか」が信頼の目安になることもあるため、「視聴者に公開できる情報と企業間で公開できる情報は異なる」という意識は結構大切です。
退社したら守秘義務がなくなる会社に勤めればいいので「やばい会社とはそもそも契約しない」とか、自衛するのも方法なのですよね。
言ってはいけないのは何のため?
こういう話をすると「守秘義務は守るべき」とかいう話が飛んでくることが予測されるわけですが、「そもそも何のために守秘義務があるの?」という話も考えておくべきです。
私はフリーランスで働いているのですが、契約書の守秘義務を見る機会は多めです。
多くの契約書には守秘義務が盛り込まれているわけですが……中には「???」って内容が盛り込まれている場合もあります。
声優として仕事をしている間に守秘義務があるのは問題がありません。これはキャラクターのブランドイメージを守る上で大切になることがあるためです。
一方で、やめてからも守秘義務が残るものは「あれ?」となるわけです。たとえば、業務上情報を公開すれば企業に損失を与える情報などは話さない方が無難です。
ところで、声優をやっていたという情報を公開して企業にダメージがあるの?という話になったり。
あんまり契約書がごちゃごちゃすると大変だからまとめて「守秘義務」としてくくってるだけで、公開しても問題ない情報が含まれることは珍しくないのですよね。
「契約に違反した!」と言われても、「じゃあ、裁判とか起こすのにどれだけ損害でたか計算できますか? そもそも、裁判成立するよう内容ですか? そもそもキャリアの話まで守秘義務に組み込むのは権利の侵害では?」ってなります。
契約は守らなければいけないと言う日本人は多いわけですが、そもそも合理性もなく「なんとなく」で色々盛り込んじゃう人がいるのが労働の現場だったりします。法律の専門家が契約書作ってるとは限らないので。真面目に専門家に監修してもらって契約書作ると結構な人件費がかかるのがポイント。
なので、しれっと無視しても文句が飛んでこないこともままあります。まぁ、フリーランスになると法律や契約周りのことは自己責任なので、おかしいなーと思ったら労働関係の専門家とか頼って「実効力や拘束力のある契約なのか」チェックしてもらうのも大切ですよーと。
一番いいのは契約前に確認して問題がないところと契約するか、改善などを求めるかなんですが……
交渉力高い人材が珍しいという話もあるので、その当たりは頑張ってとしか言いようがないです。あんまり問題あるなら弁護士への相談も視野ですね。
個人の場合も契約時には注意
企業Vの話しを中心にしてきましたが、個人Vの場合でも仕事の契約をするときは注意が必要です。個人Vにも限らず、労働契約の根っこは一緒ですけど。
Vの場合は契約内容ちゃんとチェックしておかないとうっかり情報漏らされる……とかありえてしまうので。信用できるだけを選んで危険そうなところはさけるとか、しっかりと契約の内容作りこんで同意を求めるとか交渉力が大切になったり。支払いの担保をとれるかも重要ですね。
ちなみに、私は未払いのリスクを避けるためにクラウドソーシングサイト経由で契約をしています。
大手クラウドソーシングサイトの場合は
契約条件を提示→同意→仮払い(クライアントの支払い)→仮払い確認後作業→納品→検収→検収合格で支払い
という流れになっています。
手数料が20%~5%(金額によって変動)しますが、明らかにクライアント責のトラブルなら運営経由での途中解約も視野に入るだけでなく、納品後検収を待たずに一定期間経過で強制決済が行われるなど安全性の担保がしやすいのがポイントです。
支払いを何回かに区切るマイルストーン払いなども存在するので、うまく利用するのがおすすめです。
取引実績として残すことも、非公開の内容にすることもできるので「初めての取引で支払いが不安」な場合とかは使ってしまうのも方法です。慣れてから自分のWebサイト作って直接取引にする人も珍しくないです。
キャリアは自分で守る、作る意識も重要なので、企業や雇用主の言いなりになるのではなくタフに活動してくださいねーと言うことで。契約を支える裏まで考えることは生き残るために大切な技術になりますので、よろしくお願いします~。
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