YouTubeでの動画投稿やライブ配信など、基本的には「誰もが見られる」場所で活動しているバーチャルYouTuber。
ですがその一方では、コアなファンと交流したり、限定コンテンツを公開したりするための場所として、ファンコミュニティ(ファンクラブ)を自ら運営している人も少なくありません。
自身のファンと近い距離でやり取りできるのは楽しいですし、新しい動画や企画の内容を相談するような使い方も可能。加えて、まだ収益化手段が少ない新人Vtuberにとっては、活動資金を集められる貴重な場所でもあります。
デビュー後すぐにpixivFANBOXを開設する人も多いですし、YouTubeチャンネルのメンバーシップ解禁をひとつの目標にしている人も少なくないはず。配信や動画制作だけでなくファンコミュニティの運営も、Vtuberにとっては大切な「活動」のひとつと言えるでしょう。
本記事では、そんな「ファンコミュニティ」を開設・運営できるサービスを紹介。
Vtuberにとってはおなじみのものを中心に、代表的な5つのサービスを取り上げてみました。これからファンコミュニティを作ろうと考えている人の参考になりましたら幸いです。
目次
チャンネル メンバーシップ(YouTube)
YouTubeの「チャンネル メンバーシップ」は、登録することでメンバー限定の特典を得られる会員制度。メンバーには、主に以下のようなメリットがあります。
- バッジ:チャットやコメントでメンバー限定のバッジが表示される
- カスタム絵文字:チャンネル独自の絵文字をチャットで投稿できる
- 限定コンテンツ:メンバー限定の動画・ライブ・日記などを見られる
「バッジ」や「カスタム絵文字」はチャット欄でも目立つため、見たことのある人も多いのではないでしょうか。メンバー限定コンテンツとしては、ライブ配信のほか、壁紙をプレゼントしたり、動画の制作過程や近況報告などを投稿したりしている人もいます。
メンバーが支払う金額は、チャンネル運営者が自由に設定することが可能。いくつかのチャンネルを確認してみた印象としては、デフォルトの月額490円にしているところが多いようです。
また、ひとつのチャンネルで複数のプランをつくってもOK。たとえば、490円のプランAと990円のプランBを準備し、プランBに登録してくれたメンバーには、プランAにはない特典や限定コンテンツを提供する、というような運用も可能です。
YouTubeをメインの活動場所としているVtuberにとっては、「収益源を増やせる」という意味でもありがたい機能。一方で、複数のプラットフォームを併用している場合は、「無理にファンコミュニティをYouTubeに作る必要はない」と考えることもできそうです。
クリエイター側が受け取る収益は、メンバーが支払った会員費の70%。
ただしメンバーシップ機能を使うには、YouTubeが示す「最低要件」を満たしている必要があります。必ずしもすぐに利用できるとは限らないという点は、少々ハードルの高さを感じますね。
pixivFANBOX
pixivの「FANBOX」は、ファンが継続的にクリエイターを支援できるファンコミュニティ。
「pixiv」の名前を冠していることもあり、「イラストレーターや漫画家向けのサービス」と考えている人もいるかもしれません。ですが、実際にはVtuberも数多く利用している、幅広い「クリエイター」に開かれたコミュニティサービスです(他には歌い手なども利用)。
複数の支援プランを用意できる点は、チャンネルメンバーシップと同様。
支援金額は100~10,000円の間で設定ができ、プランごとに公開するコンテンツを変えることも可能。100円ですべてのコンテンツを公開する人もいれば、高額支援者向けのコンテンツを充実させている人もいます。そのあたりはクリエイターの運営方針によりけり、ですね。
ただし「ファンコミュニティ」を謳っているFANBOXではありますが、どちらかといえばその性質は、クラウドファウンディングやパトロンに近いと言えるかもしれません。
というのも、サイトの説明文を読むと、「FANBOXは毎月支援者に作品を公開するサービスではありません」と書かれています。つまり、ファンが行うのはあくまでも「支援」であり、クリエイターは必ずしもその対価として作品を公開する必要はないのです。
コアなファンとゆるくつながりつつ、かつ活動資金も集められるプラットフォーム。それが、FANBOXの特徴だと言えるでしょう。もちろん、限定ボイスやイラストをガンガン公開してファンクラブ的に運用しているVTuberも多いですし、運営方針は十人十色です。
サービス手数料は10%。残りの90%が収益として振り込まれますが、銀行振込手数料が200円かかります(※30,000円以上の振り込みの場合は300円)。
FANBOXの活用事例
fanicon
「fanicon」は、会員制のファンコミュニティアプリ。
タレント・アイドル・俳優など、幅広い層のインフルエンサーが利用しており、スマートフォン向けアプリとしても提供されているサービスです。
faniconには、主に以下のような機能があります(※本アプリでは、コミュニティを運営するインフルエンサーのことを「アイコン」と呼びます)。
- ここだけ投稿:限定の日記や裏話を投稿できる
- グループチャット:ファン同士の交流+アイコンも会話に参加できる
- 1on1トーク:アイコンとファンが1対1で交流できる
- 限定スクラッチ:限定商品が当たるスクラッチに挑戦できる
中でも気になるのが、スクラッチ。
これは、アプリ内で購入したポイントを消費して、景品が当たるスクラッチに挑戦する機能です。景品の種類と数は、アイコン側が自由に決められます。何人かのVtuberを確認してみたところ、限定の待受画像やボイスメッセージなどを景品にしている人が多いようでした。
faniconにはパソコンからでもログインが可能ですが、画面を見たかぎりでは、どちらかといえばスマホアプリでの利用を推奨しているような印象も受けました。実際、グループチャットでのやり取りは、LINEやInstagramといったSNSに近い操作感となっているようです。
サービス手数料は少々高め。GoogleとAppleに支払う手数料30%差し引いたうえで、残りをプラットフォーム側と折半する形になります。
faniconの活用事例
Ci-en
「Ci-en」は、DLsiteが運営するクリエイター支援サイト。
Ci-en(シエン)という名前の通り、ファンコミュニティというよりはクリエイターの「支援」を目的としたサービスです。毎月の支援を継続して行うことから、ファンは「パトロン」に近い存在と言えるかもしれません。
クリエイター側で複数のプランを設定し、プランごとに特典を変えられる点は、FANBOXと同様。Ci-en独自の機能としては、以下のようなものがあります。
- アンケート:プラン特典や作品の参考になる情報を集められる
- DLsite連携:DLsiteの作品・サークルページへのリンクを掲載できる
- クーポン発行:DLsiteで販売中の作品の無料・割引クーポンを提供できる
イラストレーターや漫画家が多く利用しているFANBOXに対して、Ci-enでは、歌い手や同人音楽サークル、ゲーム制作チーム、配信者といった分野のクリエイターが多く見受けられます。
中でも目立つのが、音声作品やASMRを販売・投稿しているクリエイター。Ci-enに登録しているVtuberにもASMRを得意とする人が多く、人気を集めているようです。将来的に音声作品の販売を検討している人は、Ci-enを利用して資金集めと情報収集が同時に行えそうですね。
サービス手数料は10%(※振込手数料含む)。売上の90%がクリエイターの口座に振り込まれます。
Ci-enの活用事例
note
「note」は、クリエイターが表現活動を行うためのプラットフォーム。文章、写真、イラスト、音楽、映像などの作品を投稿・配信できます。
ブログとして使えるのはもちろん、SNSのように他のクリエイターや読者と交流したり、コンテンツを販売したりすることも可能。イラストレーター、漫画家、作家、デザイナー、歌手、写真家など、幅広い層のクリエイターが利用しているサービスです。
noteでは、クリエイターがコンテンツを公開する際には有料or無料を選べるほか、読者は投げ銭をしてクリエイターを支援することができます。有料記事の価格は、100~10,000円の間で設定可能。
また、ひとつの記事について「ここまでは無料で読めて、ここからは有料」というラインを決められるなど、細かく設定できる点も嬉しいポイント。全文無料で読める状態にしたうえで、「内容がいいと思った人は、もしよかったら投げ銭してくれると嬉しいです」という形で公開することもできます。
最近になって、月額会費制のコミュニティを運営できる「サークル」機能を新たに実装。
ここまでに紹介した他のサービスと同様に、複数のプランを設定し、ファンクラブや同好会の形で運営できます。ただし4月現在、サークル機能を使っているVtuberはまだいらっしゃらないようです(検討中の方はいらっしゃる様子)。
他方で、noteを利用しているVtuberは実は多く、Vtuberによって書かれた記事がバズったことも一度や二度だけではありません。
中には、noteによって自身の活動を多くの人に知ってもらい、その後のメディア展開や案件につながったVtuberもいます。「コミュニティ」的な使い方とはまた別の話になりますが、自身の活動の幅を広げたいVtuberは覚えておいて損のないサービスと言えるでしょう。
サービス手数料は、基本10%(※定期購読マガジンは20%)。それ以外に、購入者側の決済手数料5~15%と、振込手数料270円を差し引いた金額が、売上として振り込まれます。
noteの活用事例
まとめ
以上、5つのファンコミュニティサービスを紹介させていただきました。
同様の機能を持ったWebサービスやアプリは他にもありますし、その中にはVtuberが利用しているものもあります。ここでは紹介できませんでしたが、サービスによっては独自の機能を持っている場合もありますので、気になる方は調べてみてください。
そのうえで、どのサービスを利用するかは人それぞれです。
YouTubeでの活動に注力している人はメンバーシップだけでも事足りるでしょうし、デビュー間もない新人さんはFANBOXが始めやすいはず。ゆくゆくは音声作品を販売したい人にとってはCi-enが適しているでしょうし、“バーチャル”に限らず多方面で活躍したい人は、noteがその足がかりとなるのではないでしょうか。
自分を応援してくれるファンと近い距離で交流できるだけでなく、活動の幅を広げるきっかけにもなりうるファンコミュニティ。ぜひ気になったサービスを活用してみてください。
※本記事に掲載されている情報は、2020年4月時点のものとなります。
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